パラグライダーを始めて、一生懸命練習し、数年かけてようやく手に入れたパイロットライセンス!
だけど、、、明確な目標を失ってしまいなんとなく飛んでいるだけになってしまっていませんか?
ベテランパイロットの方、
「飛ぶのは好きだけど、なんだかちょっと飽きてきたなぁ」
なんて思うことありませんか?
そうなんです!
人間は良くも悪くも適応力が高いですよね。
なので「空を飛ぶ」という特別な楽しみに対しても徐々に鈍感になってしまいます。
だけど、それって実はまだ楽しみ方を知らないだけなんです。
パラグライダーは奥が深い。僕自身、20年近くやり続けてもまだまだ知らないことややりたいことで溢れてます。
今回は、パイロットライセンス取得後にパラグライダーをさらに楽しむための方法として
ナビゲーションシステムツールをご紹介!
使いこなせば、
- 目的を持ったフライト
- フライトの楽しみ方が増える
- スキルアップ
- 仲間たちと楽しさを共有
- フライトの安全が増す
- 講習生にどや顔できる
などなど、頑張って学ぶと何倍ものプラスなって返ってきます!!
ナビゲーションシステムツールとは
ここでいう「ナビゲーションシステムツール」は、パラグライダーで使用できるフライト機器(バリオ、GPS機器、スマホアプリなど)の中でナビゲーション機能(システム)を持っている機器(ツール)のことです。
パラグライダー界隈では、一般的にナビゲーション機能のある機器を「フライトコンピューター」と呼びます。
ナビゲーションの役割と必要性
「ナビゲーション」の役割はその言葉の通り、目的地までの経路や道順や情報を総合的に案内(表示)してくれる機能です。
ナビゲーション機能を有していない(または有していても使用しない)場合、機器の画面には高度・対地速度・上昇/下降速度・方角などの「情報」が表示されているだけです。
そこに、ナビゲーション機能をプラスすることで「案内」を表示させることができます。
案内を活用することで自分の現在地と目的地の関係を的確に知ることができ、フライトの安全性を高めたり、確信をもって安心して広範囲を飛び回ることができるのです。
なにより、目的を持ったフライトができます。

具体的にどのように活用するのかはこの記事の後半、ナビゲーションシステム(ツール)を活用しようでご紹介します。
基本的なナビゲーション機能
主なナビゲーション内容は、
- 目的地までの距離
- 目的地への到達予測高度
- 目的地への到達予測時間
- 目的地への到達必要高度(滑空比)
- 経路を設定し、それぞれの経由地に対する上記案内
などです。

高度・滑空比・風向風速などの要素を計算して、自分の現在地から目的地へ移動するために必要な様々な情報を案内してくれます。
もちろん実際「予測」部分は、局地的な気象の変化や操縦方法などの要素が複雑に影響するので計算通りにはいきませんが、目安としてかなり有効に利用できます。
ナビゲーション機能のある機器
ナビゲーション機器は大きく分けると2種類、
- バリオ一体型専用機器(GPS内蔵アルチバリオメーター)
- スマートフォン(タブレット)+アプリ
です。
近年は、スマホ(タブレット)アプリでも非常に優秀なナビゲーション機能を無料(もしくは格安)で提供してくれているので、端末購入費用の1~2万円程度で高機能なナビゲーションが手に入り、パイロットにとってかなり身近になってくれました。
専用機器はかなり高価(9万円~25万円程度)な物なので、本当にありがたい時代です。
1 | バリオ一体型専用機器(GPS内蔵アルチバリオメーター)
パラグライダーなどのスカイスポーツ専用に作られたGPS内蔵バリオ(アルチ・バリオメーター)の中でナビゲーション機能があるモデルです。
バリオの種類に関してはこちらで解説しています↓

価格はメーカーやモデルによって様々ですが、例えばこんなモデルがあります↓
ここに載せたモデルはお手頃価格のモデルでも、コンペティション(競技用ナビゲーション)にも対応しています。
ルート(タスク)ナビゲーション機能はあっても、競技用の機能(スタート時間(方法)設定やシリンダーの個別設定など)は搭載されていないモデルもあるので用途に合わせた機種選びが重要です。
2 | スマートフォン(タブレット)+アプリ
スマートフォンアプリでナビゲーション機能のあるものはいくつかあるようですが、基本的にはXC Track(Androidアプリ)一択。
個人的にはXC Track一択(他のアプリを選ぶ意味がない)ですが、手持ちがiOSしか無くてわざわざAndroid端末を買いたくないという強い思いがあるのであれば用途によってはSeeYou Navigator(Androidアプリもあります)やその他のiOSアプリでも問題ないと思います。
SeeYou Navigatorは無料版(かなり機能制限がかかる)を少し使ってみた程度なので詳細は未確認です。
XCTrack – Android(無料、寄付制)

出来ないことは無い!と言っても過言ではないほど高機能なフライトコンピューターアプリの代表格!
Paragliding World Cup(PWC)などのパイロンレースの世界大会でも多くの選手が使用しているアプリです。
しかも、それが無料!
最近では、フライト機器メーカーの商品開発もXC Trackありきで開発&商品紹介されているケースもあります。
世界中の多くのパイロットが愛用しているXC Tracer社のXC Tracer Maxx Ⅱの商品説明ページには、
「Functions for competitions and XC are not planned at the moment, since everyone flies with a tablet with XCTrack anyway.(どうせ全員がタブレットでXCTrack使って飛ぶから、競技会や XC 用の機能は現時点では計画してないよ~。)」
https://www.xctracer.com/en/xctracermaxx
って書いてあります。
XC Trackの使い方は下記の過去記事で紹介していますが、内容が古いので近々更新予定です。。。
が、参考にはなるかと思います。

SeeYou Navigator – iOS(機能制限付き無料)
スロベニアに本社のあるフライト機器メーカー(ソフトウェア会社)のNaviter社が出しているフライトコンピューターアプリです。GPS情報をマップと組み合わせて表示し、各種ナビゲーション機能も備えていますが無料だと結構機能制限がかかります。
試しにタスクを入力してフライトしてみましたが、すべての行程が結構分かりにくくて使いにくいです。
まぁ慣れの問題もあると思いますが。
Naviter社はバリオ一体型専用機器(GPS内蔵アルチバリオメーター)の「Oudie N」や「Element Track(FLYTEC社は数年前にNaviterが吸収)」の開発・販売やSeeYouというフライト解析・管理のツールも開発・提供しており、それらとの連携でSeeYou Navigatorを利用する設計になっているようです。
基本的なナビゲーションの種類
どの機器やアプリにも共通する基本的な機能の説明をしていきましょう。
まずは「ウェイポイントをインポート」
ナビゲーション機能を使うためにはウェイポイントという位置情報(緯度・経度・高度)データが必要になります。
これが意外とやっかい。
ウェイポイントを扱うためのデータ形式には様々な種類(.wpt、.cup、.gpx、.kmlなど)があり、ソフトウェアによって対応する形式が違います。
細かく説明すると長くなってしまうので、ウェイポイントのデータ形式に関しては実際に自分が使用する際に確認してください。
ちなみにXC Trackの公式ページにはサポートされているデータ形式として、
- Compe GPS ’‘.wpt’’
- Format UTM ’‘.wpt’‘,’‘.utm’’
- GpsDump (GEO) Format ’‘.wpt’’
- OZI Explorer ’‘.wpt’’
- Seeyou ’‘.cup’’
と記載されています。
かなり汎用性が高い感じですね。
これを見ると分かるように、.wptの中にもいろいろと種類があります。
(なんでこんなことになってるんだろ??誰か教えて!)
とにかく、自分の使いたいソフトウェアがサポートしている形式さえ分かれば大丈夫です。
もちろん、一つづつWaypointを作成することはできるのですが、、、
パラグライダーのエリアではすでに主要なウェイポイントリストが作られていることも多いので、わざわざ作らなくても大丈夫!
誰かにもらいましょう。
もし、自分が使いたい形式じゃなかった場合は、Gps Dumpなどのツールを使って変換しましょう。
下記のサイトからダウンロードして使用します。
Androidアプリもあります↓
こんな感じのアプリケーションです。

ウェイポイントが準備出来たら、それぞれの機器にインポートしましょう。
やり方は機器によって様々ですのでマニュアルなどで確認してみてください。
特定のポイントへ「GO TO(Go to Waypoint)」

「GO TO」「Go to Waipoint」「Waypoint」「ウェイポイント」など表示される名称はいろいろですが、機能は同じ。XC Tarckの場合は「ウェイポイント/XCナビゲーション」です。
特定のWaypoint(目的地)を指定して、その場所への様々な情報を表示(案内)してくれる機能です。
- 目的地までの距離
- 目的地への到達予測高度
- 目的地への到達予測時間
- 目的地への到達必要高度(滑空比)
など、いろいろな情報を実際の数値と予測値で表示されます。
ランディング地点を指定しておく使い方が一般的です。
複数ポイントでルート設定「ルート(タスク)ナビゲーション」

複数のWaypointを順番に指定(経由地)し、最終目的地までのルートをナビゲーションする機能です。
XC Tarckでは「タスク」がそれです。
ルートのことをタスクと呼ぶのが一般的です。
主に、「次の目的地(経由)」に対する情報と「最終目的地(ゴール)」に対する情報を分けて表示させることができます。
- 次の目的地(ゴール)までの距離
- 次の目的地(ゴール)への到達予測高度
- 次の目的地(ゴール)への到達予測時間
- 次の目的地(ゴール)への到達必要高度(滑空比)
このルートナビゲーションに「スタート時間・方法」「個別のシリンダーサイズ」「ゴールのルール」「飛行制限空域」などの要素を加えることができる機種やアプリはパイロンレース(大会)で使用できます。
ナビゲーションシステム(ツール)を活用しよう
メインLDへGO TOで2つの安心
メインランディングへの「GO TO」を利用することで2つの安心を得ることができます。
- 初めてのエリアでも安心
- ランディングから離れても安心
①初めてのエリアでも安心

初めて行くエリアは土地勘もないので、ランディング場を空から確認するのは意外と難しいことがあります。
ランディング場所を確実に把握しておかないと安心してフライトが楽しめませんよね。
初めて飛ぶエリアの場合はフライト前にランディング場の確認にいくと思いますので、その際にランディング場の中心をマーク(Waypoint作成)しておきましょう。Waypointの作り方は機種によって違うのでマニュアルなどで確認してください。もちろん既存のWaypointをもらえるのであればOKです!
マークしたWaypoint(ランディング場)にGO TO設定しておくことで、常にランディング場までの距離や方向が表示されるのでランディング場を見失う心配がなくて安心です。
初めてのエリアで、フライトに夢中になっているとランディング場がどこか分からなくなることって意外とあるんです。。。
②ランディングから離れても安心
もう一つの安心は、現状把握。
ソアリングコンディションで広範囲を飛ぶ場合、常に気にするべきことは「ランディングに届くか?」ということ。
Go toを設定しておくと、到達に必要な予測高度や滑空比が常に表示されます。
ランディングまでの距離&高度差&風向風速を把握することで「現在地からランディングまで届くのか」の目安になります。もちろん、その日のコンディションや地形なども考慮して総合的に判断する必要がありますが。
もしも、明らかにランディングに届かない状況になった場合は降りられる場所を探しつつ頑張って高度を上げましょう。
時にはツリーランディングを選択するのがベストな状況に陥る可能性もあるので、最悪な状況のシミュレーションも必要です。
ナビゲーション機器には風向風速も表示されますが、鵜吞みにせず常に対地速度から自身で計算して風を把握する癖をつけましょう。
ルート(タスク)ナビゲーションでスキル&楽しさアップ
ルートナビゲーションは、コンペティション(大会)のイメージが強いと思いますが、普段のフライトに取り入れるとスキル&楽しさアップになります。
活用のメリットはこんな感じ。
- 目的(目標)を持ったフライト(フライトプラン)
- 仲間と楽しさを共有
- アフターフライトの楽しみ
1 | 目的(目標)を持ったフライト(フライトプラン)
ルートナビゲーションの活用は2パターン。
- パターン1:既存のタスクを回る
- パターン2:その日のコンディションの読み、自分でタスクを設定
【パターン1:既存のタスクを回る】
エリアによってはスタンダードなタスクが設定されている場合もあります。
そのように固定タスクをいろんなコンディションで何度も回ると、過去の自分のフライトと比較することもできますね。フライトを分析し、改善方法を考えて実践してスキルアップ目指しましょう!
コンディションを見極めて、いかに効率よくタスクをコンプリートするか!?飛んでいる最中もハッキリとした目的ができて、飛び方が今までと変わるはずです。
フライト後も、ログ(軌跡)を見ながらその時の状況や自分の判断を思い出して、自分なりに答え合わせをしてみましょう。
慣れるまではこのパターンがおすすめです。
【パターン2:その日のコンディションの読み、自分でタスクを設定】
タスクを回ることに慣れてきたら、自分でタスクを考えるのもおススメ!
その日のコンディションを読み(天気予報&観天望気)、テイクオフするまでにタスクを考えましょう。
パターン1と違って、タスク自体を自分で考えることでコンディションの予測・検証もできます。
コンディションを最大限に使うタスクなのか、確実にコンプリート出来るスピードタスクなのか、などそのタスクの性質もイメージしながら考えてみましょう。
自分で設定した目標をクリアできるのか!?ゲーム性もあり、確実にフライトの楽しさアップです!
2 | 仲間と楽しさを共有
タスクを仲間と一緒に回るとさらに楽しくなります!
タイムを競い合ってもいいし、難しいタスクを協力しながらクリアしていくのもいい。
同じ目的地に向かってのアプローチ方法が人によって違ったりすると興味深いですよね。
自分とは違う考え方で飛んでいる人が明確に分かるのもメリットです。
結果的に誰の考えが正解だったのか、それが自分じゃなかった場合はその人がなぜそんな風に考えたのか・・・。
学べることがたくさんあります。
ちょっとパソコンが得意な仲間がいれば、簡単にレースとしての結果を出すことができるので「ミニレース」のような楽しみ方ができます。
FAI ハンググライディング&パラグライディング委員会(CIVL)というパラグライダーの国際組織のオフィシャルスコアリングソフト(競技用集計ソフト)であるFS Compは無料で使用できます。
3 | アフターフライトの楽しみ
近年は、いろいろなサイトで2Dや3Dでフライトログデータ(軌跡)を表示や動画再生することができます。
自分自身のフライト分析はもちろんですが、仲間のログも合わせて見ればその日のタスクフライトを視覚的に共有することができます。
SportsTrackLive
SportsTrackLiveでは、フライトログデータ(.igc、.gpxなどの形式)をアップロードするだけで自動的に2Dや3Dでの動画を作成してくれます。有料登録の催促広告が出ますが4人までの同時再生なら基本的には無料で使えます。
>>先日のフライトの再生リンク<<

Google Earth
Google Earthにフライトログを表示させて、じっくりとフライト解析するのもいいですね。
個別にログの色や太さなどカスタマイズができて見やすい。
Google Earthはブラウザで動くものやスマホアプリなどいろいろとありますが、見やすさや機能性の点から、Google Earth プロ(パソコン用)をおススメします。
Google Earthプロに.kml形式のフライトログをインポートすれば、下のスクリーンショットのように表示させることができるんです。
もちろん、3Dで表示されているのでマウスで画面を操作して角度や縮尺を自由に変更できます。

SeeYou
SeeYouのデスクトップアプリでも複数機の同時再生が可能です。
自分のログの表示や分析ならブラウザで動くSeeYou.Cloudでもできます。
SeeYouはログの表示方法が多彩で、上昇率で色分け(上昇/下降が色分けされて見やすい)する機能もあり便利です。
>>SeeYou公式ページ<<

まとめ
「ナビゲーションシステムツール」なんて言うとなんだか堅苦しいですが、実は一般パイロットにとってもめちゃめちゃ便利で面白いツールなんです。
- どうやったらもっと上手くなれるのか?
- フライトに目的がほしい!
- 仲間と一緒に楽しみたい!
- なんだかちょっと飽きてきた・・・
そんなふうに思ったことがあれば、ぜひこのページを参考にしてみてください。
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