「パラグライダーと天気予報」をテーマにした記事の第2弾です。
気象情報サイト「Windy」のパラグライダーでの活用方法を解説していきます。
Windy(ウィンディ)は2014年に登場したチェコの会社が運営する気象情報サイトです。当初はWindytyという名称でしたが、2017年にWindyに改名されたようです。
サービスの背景に関しては公式サイトのAbout Windyに書かれています。
英語が苦手な人はGoogle翻訳でポチッと日本語ページにして読んでみましょう。
風、雲、雨、雷、気温、気圧など様々な気象予報(数値予報)を感覚的に分かりやすく視覚化してくれているサイトです。スマホアプリもあり、使い勝手もなかなか良いです。
機能を深堀していくと終わらなくなってしまうので、一般パイロットがチェックするべき3つのポイントに絞って紹介していきます。
- 高度/時間ごとの風予報
- 時間ごとの雲予報
- エマグラム(Skew-T)で大気の安定度
とりあえず、この3つさえ押さえておけばOKです!
慣れてきたら他の機能の使い方も覚えていけば、パラグライダーだけでなく様々なアウトドアシーンで活用できます。
Windyで見るべき3つのポイント
その前に、まずはWindyの表示方法を確認しておきましょう。
ブラウザで見ることができますが、スマホで利用する場合はアプリの方が便利なのでインストールしましょう。有料版もありますがとりあえず無料版で大丈夫です。
アプリをインストールしたらさっそく起動!
起動時に出てくる初期設定のおススメは下記の通りですが、後で変更できるので違っても大丈夫です。
項目 | おすすめ |
---|---|
”Windy”に位置情報の使用を許可しますか? | Appの使用中は許可 |
風 | m/s |
気温 | ℃ |
初期設定が完了するとデフォルトでは「風」情報が色と粒子アニメションで表示されていると思います。
マップはドラッグで移動、ピンチアウト/ピンチインで拡大/縮小できます。
右下の「≡」をタップしてメニューを開きましょう。

Windyが表示出来たらさっそく3つのポイントについて解説していきます。
1.高度/時間ごとの風予報
1つ目の見るべきポイントは「高度/時間ごとの風予報」です。
やっぱりまずは風予報をチェックですね!
天気が良くても風が悪ければ飛べないし、フライトプランも立てようがないですからね。
表示させる風情報を特定の高度と時間で設定することができます。
さらに特定の場所にカーソルを合わせることで、設定した高度と時間のその場所の風予報を確認することができます。
高度設定
メニューを開いたらすでにレイヤーアイコン一覧の右上にある「風」レイヤーが選択されているはずです。
黄色線で囲まれていれば選択されている状態です。もし違う項目が選択されていたら「風」に変更します。

「風」が選択されていれば、レイヤーアイコン一覧の下にある「標高」(緑枠)の調整レバーが動く状態になっているので、左右にドラッグして希望の標高に変更しましょう。
標高はhPa(気圧)、m、ftの3種類で表示されます。
気圧と高度の関係は気象データではなにかと出てきますので、ざっくり覚えておくと便利かも?

気圧と高度の関係
高度 | 気圧 |
---|---|
0m(海面) | 1013hPa |
750m(八方LD) | 925hPa |
1500m(八方TOくらい) | 850hPa |
3000m(北アルプス稜線くらい) | 700hPa |
5500m(気圧が地上の約半分) | 500hPa |
見たい高度が設定できたら画面左側に見えているマップ部分(メニュー以外の部分)をタップするとメニューが閉じます。
時間設定
下部の「曜日」「日にち」が表示されている部分を左右にドラッグすると表示させる時間を1時間単位で変更することができます。

ピンポイントの風速表示
「高度」と「時間」の設定が完了すれば、希望の風情報が色分けと粒子アニメーションで表示されています。
(色分けは拡大表示すると無くなります)
さらに特定の場所の風情報を表示させたい時は、マップのどこかをタップしてください。
すると、上部にグレー背景の情報バー、マップ中央より少し上に白色の十字カーソルが表示されます。
十字カーソルの中心部分の風情報(風速、風向、気象予報モデル、高度)が上部左側に表示されている状態です。
※「気象予報モデル」に関してはこの記事の最後で解説しています。

ドラッグでマップを移動させて表示させたい場所に合わせましょう。
この状態で下部の日時スライダーを動かすと(日時を変更すると)左上の風情報も対応して変化するので、時間軸での風の変化は確認しやすいです。
スマホの場合は、高度の変更は「メニューを開く」→「高度を変更する」→「メニューを閉じる」という操作が必要ですが、PCで見るとメニューを開くことなく高度も変更できるので見やすいです。
2.時間ごとの雲予報
2つ目の見るべきポイントは「時間ごとの雲予報」です。
サーマルが出るも出ないも日射次第!
どの程度のコンディションが期待できそうか、雲量をチェックしましょう!
Windyでの雲予報は「雲」「上層雲」「中層雲」「下層雲」の4種類あります。
降雨も含めてざっくり全体を見たい時は「雲」でOKです。
高度ごとにもう少し細かく見ていきたい時は「上層雲」「中層雲」「下層雲」さらに「雨、雷」をそれぞれ見てみましょう。
ちなみに気象学では、各層の高度は以下のように定義されています。
他の気象予報データ(湿度や不安定度など)と合わせて考えると、各層にできる雲の種類も概ね予想できそうですね。
名称 | 高度 |
---|---|
上層雲 | 高度5,000~1万3,000m |
中層雲 | 高度2,000〜7,000m |
下層雲 | 高度2,000m以下 |
雲
薄オレンジをベース(雲無し)として、白色の濃さで雲が表示されます。
降水量は最下部にある色分けの凡例の通りです。


ちなみに風情報と同様に、マップをタップすると上部にグレー背景の情報バー、マップ中央より少し上に白色の十字カーソルが表示されます。
雲量(%)、降水量(mm)、気象予報モデルが表示されています。
※高度は設定が表示されていますが雲には関係ありません。

同じ時間の「上層雲」「中層雲」「下層雲」「雨、雲」レイヤーを表示するとこんなこんな感じでした↓↓
上層雲


中層雲


下層雲


雨、雲


パラグライダーのための気象予報としては、どの高度にどの程度雲ができるか予測ができた方が良いので、それぞれの高度の雲を確認して、実際の天気と答え合わせするとなかなか面白そうですね。
3.エマグラム(Skew-T)で大気の安定度
そして、見るべきポイント3つ目は「エマグラム(Skew-T)で大気の安定度」です。
読み取るために少しの知識と慣れが必要になる項目ですが、慣れてしまえば要点は簡単ですのでご安心を。
要するに、
どの高度でどの程度サーマルが出やすいの?逆転層は?雲底高度はどのくらいになりそうなの?雲はどのくらい発達しそうなの?その雲は危ないの?危なくないの?
っていうことがだいたい予測できるデータです。
ただし、そのすべての読み取り方を解説すると長くなるので、今回は一目で分かる内容だけ解説していきます。
ところで、エマグラムとSkew-Tって何が違うの?って思いますよね。
どちらも同じ内容(気温、露点温度、風速)を高度を縦軸にグラフ化したものです。
要するに同じデータです。
簡単に違いを説明すると、
エマグラムは縦軸の高度と横軸の温度が直角に交わっているシンプルなグラフです。
エマグラムの方が高度による気温の変化を直感的に理解しやすいのがメリット。
Skew-Tは気温軸が左下から右上に向かって斜めになっているのが特徴です。
気温軸を傾けることで大気の安定性や対流の可能性などの情報を読み取りやすくなります。
これは、実際に大気の安定度を確認する作業をするとはっきりと分かります。
といった感じです。
まぁ、現状ではどっちでも問題ないですし、直感的に分かりやすいエマグラムの方が抵抗なく見れるかもしれないですね。
まずは、エマグラム(Skew-T)の表示方法。
画面下部の日時スライダーを動かして表示させたい日時に合わせましょう。
今回は「23日13:00」に合わせました。
日時を合わせたら画面右上の「サウンディング」をタップするだけ。
もし、上部の黒いバーが表示されていなければ、画面のどこかをタップすれば出てきます。
「ピンポイントの風速表示」の時の解説と同様に、白色の十字カーソルを表示させたい地点に合わせておきましょう。

これで表示されたのがエマグラムです。
(デフォルトではエマグラムが表示されるはず)
Skew-Tに切り替えたい時は(赤矢印で示した)切り替えバーをタップしましょう。

(赤矢印で示した)白いポッチが右にスライドしていればSkew-Tになっています。
グラフを見れば気温線が傾いているので一目で分かります。

表示するグラフはエマグラムでもSkew-Tでもデータは同じなのでお好みでどうぞ。
グラフの左下に(下画像の赤枠内)グラフのデータが表示されています。

表示されているデータは、
- TCON:対流温度
- CCL:対流凝結高度
- LCL:持ち上げ凝結高度
- モデル:選択されている数値予報モデル
- 標高:選択地点の標高
- モデルの標高:グラフの最低高度
です。
今回はLCL(持ち上げ凝結高度)だけ覚えておきましょう。
Windyで表示されるLCLは、
「グラフ内の最低高度(今回は1,285m)にある空気塊を強制的に持ち上げた時に凝結して雲になる高度」
一般的にこの数値が下層雲の雲底高度と似た数値になることが多いので、データからの予測としは、
LCL=雲底高度
でOKです。
もう少し詳しくグラフを読みたい人は、グラフをタッチ(PCの場合はマウスオーバー)してみましょう。
すると、下画像のようにタッチしたポイントを中心に乾燥断熱線と湿潤断熱線が補助線として表示され、そのポイントに対応する高度の気温と露点温度も状態曲線上に表示されます。

見るべきポイントは2つ。
- 気温減率
- 湿数
気温減率は皆さんご存じの通り、高度による気温の変化です。
確認したい時間と場所の気温状態曲線を乾燥断熱減率&湿潤断熱減率と簡単に比較できてしまうのがSkew-Tのこのグラフです。
安定している層(サーマルが出にくい)や不安定な層(サーマルが出やすい)を確認してみましょう。
逆転層や等温層なども確認できます。
湿数は気温から露点温度を引いた数値です。僕らフライヤーにとっては重要な指標ですね。
この数値が低いほど湿度が高いので雲が発生する確率が大きくなります。
目安としては湿数が3℃以下で湿った空気(雲や霧が発生する)という判断をします。
高層天気図を読む際にも同様です。
グラフの湿数を見れば、どの層で雲が出やすいか予測できます。
数値予報モデルの選択
Windyでは様々な数値予報モデルが利用できるのですが、日本国内で利用できるのは「ECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)」「GFS(アメリカ国立気象局)」「ICON(ドイツ気象局)」の3つです。
特にこだわりが無ければデフォルトで選択されているECMWFがおススメです。
理由は、

で解説していますが、現状では最も予測精度が高いとされているからです。
「数値予報モデルって何?」という方も、この過去記事を読んでいただければ解説しています。
まとめ
今回はWindy初心者のパラグライダーフライヤーの方向けに簡単な使い方を解説してみました。
Windyは無料版でも非常に多機能で、いろんな数値予報データを僕ら気象の素人に向けて分かりやすく表示してくれるありがたいサイトです。
せっかくいろいろなデータを簡単に入手することができる時代になってくれたので、ぜひ活用してみましょう。
気象のことを少し勉強すれば確実に、パラグライダーがもっと楽しく、もっと安全になります!
僕自身も気象に関してはまだまだ未熟者なので、日々勉強してます。
もし、間違った情報を書いてしまっていたら随時訂正していきますので、詳しい人は優しく指摘してください・・・。
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